研究紹介
多様なシステム階層間の連携・協調による高性能・高信頼・低消費電力計算システムに関する研究を行っています。様々なハードウェアの特性や省電力技術に着目し、スーパーコンピュータシステムやクラウドシステム全体を汎用的かつ効率的に扱うことのできる新しい設計方法論の確立を目指しています。
性能特性の異なるアクセラレータ、プロセッサ、ストレージ、ネットワークインタフェースカード、スイッチが融合したアーキテクチャ構成によって省電力化と高性能化を実現し、細部を隠ぺいするシステムソフトウェアによる抽象化とプログラミング環境の実現により、高い汎用性を実現する計算機システムを目指した研究を行っております。
1.次世代スーパーコンピュータシステムの研究
スーパーコンピュータシステムの開発において消費電力が性能や設計の制約となっており、計算機資源や電力資源を有効に利用することが重要です。そこで、計算機資源と電力資源を有効に利用するスケジューリングアルゴリズムや資源管理のためのリソースマネージャの研究を行っています。 また、従来のスーパーコンピュータシステムではバッチ処理による資源利用が主な利用方法でしたが、近年、ストリーミング処理による活用が着目されて います。そのため、バッチ処理とストリーミング処理を効率的に行うためのスーパーコンピューティングシステムの実現を目指した研究を行っております。
2.マイクロサービス実行基盤の研究
Webアプリケーションの開発現場では開発を効率的に行い、かつ、継続的にサービスを展開することが求められています。多数のチームによって開発を並列化することによって開発効率を向上させ、運用に関するデバッグや性能チューニングといった作業コストを削減し、アプリケーションの開発に注力できる開発手法が重要視されています。このような背景のもとマイクロサービスと呼ばれるソフトウェア開発技法が普及しつつあります。マイクロサービス開発では1つのアプリケーションを複数の小さなサービスに分割し、それらのサービスを疎に接続し、多数のサービスの集合体として1つのアプリケーションを開発する開発手法です。これにより1つのチームは1つのサービスの開発に注力することができ、開発の効率化を実現することができます。
一方でマイクロサービスは実行効率が悪いという課題があります。それぞれのサービスはLinuxのコンテナ仮想化技術を用いているため、サービスの数だけコンテナが必要になります。Linuxプロセスの生成、コンテナの管理などがオーバヘッドになります。さらに、各サービス間はTCP/IPを用いて接続されており、通信部分のオーバヘッドが問題となります。また、一般にモノリシックなサービスと比較し応答時間が長くなりやすい課題があります。 これらの問題を解決するために新世代デバイスを用いた密結合マイクロサービス実行基盤の実現を目指した研究を行っています。新世代の不揮発メモリやFPGA等を用いて、これまで疎に接続されていたマイクロサービスを密に結合し、高い実行効率を有するマイクロサービスの実行基盤に関する研究を行っています。マイクロサービスの高いモジュラリティや抽象度を失うことなく新世代デバイスを有用に利用するための新たな抽象化を実現し、これらのハードウェアを有効に活用する資源管理によって、高い実行性能を有するマイクロサービス実行基盤の実現を目指します。
3.ドメイン固有アーキテクチャの研究
ドメイン固有アーキテクチャ(DSA: Domain Specific Architecture)は特定のアプリケーションに対して汎用のCPUを用いて計算を行うのではなく、アプリケーションに特化したハードウェアによって効率的に計算を行うアーキテクチャです。アプリケーションに特化した専用ハードウェアを用いることによって計算の高速化や省エネルギー化を達成することが可能です。近年はAIアプリケーションを高効率に行うAIアクセラレータが着目されています。本研究室ではAIアクセレレータや最短経路計算アクセラレータ、ネットワーク処理アクセラレータなどのドメイン固有アーキテクチャに関する研究を行っています。